不動産投資は「購入金額以上で売却しないと損する」のか?
〜大和財託の試算データから考える〜
「不動産投資は、買った価格より高く売らないと意味がない」
そう思っている人は少なくありません。
しかし実際には、保有中の家賃収入(インカムゲイン)と借入返済の進み方によって、
購入価格を下回って売却しても十分に利益が出るケースがあります。
本記事では、不動産投資会社「大和財託株式会社」が公開している試算データをもとに、
「物件価格が21%下落しても利益が出る理由」を投資家目線で解説します。
■ 試算の前提条件(大和財託の公開データより)
項目 | 内容 |
---|---|
物件種別 | 木造アパート(新築) |
物件価格 | 15,850万円(うち土地6,340万円・建物9,510万円) |
購入諸費用 | 424.7万円 |
総投資額 | 16,274.7万円 |
年間満室想定賃料 | 1,062万円(表面利回り6.7%) |
空室率 | 2% |
賃料下落率 | 年0.5% |
運営費用 | 192.9万円(管理手数料3.3%など) |
営業純利益(NOI) | 847.8万円(FCR:5.21%) |
■ 融資条件
項目 | 内容 |
---|---|
融資金額 | 15,400万円(LTV:97.1%) |
自己資金 | 874.7万円 |
金利 | 1.9% |
返済期間 | 35年(元利均等返済) |
■ 保有期間と売却設定
- 保有期間:15年
- 売却価格:12,300万円(購入価格より▲21%)
- 売却諸費用:405.9万円
■ シミュレーション結果(大和財託 公開データより)
項目 | 税引前 | 税引後 |
---|---|---|
1年目CF | 245.1万円 | 228.2万円 |
15年間累計CF | 3,396.4万円 | 3,055.9万円 |
売却時CF | 1,871.8万円 | 1,200.7万円 |
合計キャッシュフロー | – | 4,256.7万円 |
自己資金874.7万円を投下して、約3,382万円の利益(税引後)。
投資全体の内部収益率(IRR)は25.0%と、株式・投信を大きく上回ります。
■ 下落率別の収益シミュレーション
下落率 | 売却価格 | 最終損益 | 自己資金比 |
---|---|---|---|
▲21% | 12,300万円 | +3,382万円 | +387% |
▲35% | 10,302万円 | +2,650万円 | +203% |
▲50% | 7,925万円 | −257万円 | −29% |
■ 投資家目線で見たポイント
この試算から明らかになるのは、「不動産投資は、購入金額より低く売っても利益が出る」という事実です。
理由は次の3点に集約されます。
- 家賃収入(インカムゲイン)が継続して得られる
- ローン返済により元本が減少し、純資産が増える
- 減価償却・税効果で実質利回りが高くなる
不動産投資の正しい見方は、「購入額と売却額の差」ではなく、
保有中キャッシュフロー+売却時キャッシュフローで全体リターンを評価することです。
■ 築15年で21%下落しても利益が出る理由
木造アパートが築15年で21%下落するのは自然な水準です。
しかし、その間に積み上がるキャッシュフローと元本返済が、下落分を十分に上回ります。
つまり、時間を味方につけた構造こそが、不動産投資の最大の強みなのです。
■ まとめ:売却益より「保有期間のCF」が投資の本質
- 不動産投資の利益は「購入額と売却額の差」だけでは測れない
- 保有中の家賃収入+元本返済で資産が増える
- 売却時に多少値下がりしてもトータルではプラスになる
不動産投資の本質は“保有中のキャッシュフロー経営”にあります。
レバレッジを活かせる会社員・共働き世帯であれば、
銀行融資を味方につけて長期的な資産形成を実現できるのです。
※本記事の試算内容は大和財託株式会社の公開資料「不動産投資分析レポート」をもとに再構成しています。実際の投資判断はご自身のリスク許容度・資金計画に基づいて行ってください。

会社員として働きながら、長期・分散・低コストを基本としたインデックス投資と安定した家賃収入を生む不動産投資を実践し、金融資産1億円を40代で達成。 培った知識と経験をもとに、**販売をしないFP**として活動し、「誰でも経済的自由を目指せる時代」を作ることを目標とします。