貯金を優先すべきか、投資を優先すべきか|資産形成は「順番」で決まる
資産形成について考えるとき、よく出てくる疑問があります。
それが「貯金を意識するべきか、それとも投資を意識するべきか」という問いです。
この問いに対して、「どちらが正解です」と一言で答えることはできません。
なぜなら、人生のどのタイミングにいるかによって、最適な答えは大きく変わるからです。

たとえば、社会人になって間もない頃や、20代前半など、まだ収入が少ない時期。
この段階では、「貯金をするだけでも大変」という人がほとんどではないでしょうか。
家賃や住宅費、食費、通信費、交際費。
毎月の支出を払い終えると、月末にはほとんどお金が残らない。
そんな中で「投資を頑張ろう」「運用を工夫しよう」と言われても、現実味を感じにくいのが正直なところだと思います。
ここで、ひとつ具体的な例を考えてみます。
仮に、投資用の資金として100万円を持っていたとしましょう。
この100万円を、年率5%で運用できたとします。
その場合、1年間で得られるリターンは5万円です。
一方で、同じ1年間で、給料の中からコツコツと貯金をして、
100万円を貯めることができたとしたらどうでしょうか。
この場合、1年間で増えた資産は100万円です。
投資による5万円と、貯金による100万円。
どちらが資産形成に与えるインパクトが大きいかは、明らかです。
この段階では、投資のリターンよりも、貯金による増加額の方が圧倒的に大きい。
だからこそ、投資を始めたばかりの段階や、20代・30代といった人生の前半では、
「どんな投資商品を選ぶか」
「利回りを何%にするか」
といったことに時間を使うよりも、
いかに貯金額を増やせるか、いかに収入を増やせるかに時間とエネルギーを使った方が、結果として資産形成は早く進みます。
ここで誤解してほしくないのは、これは「投資が大切ではない」という話ではないということです。
あくまで、優先順位の問題です。
次に、少し時間が進んだケースを考えてみます。
仮に、資産がある程度増えてきて、投資からの収入で年間100万円を得たいと考えたとします。
年率5%で運用すると仮定すると、必要な元本はいくらになるでしょうか。
答えは2000万円です。
2000万円 × 5% = 100万円。
ここまで資産が育ってくると、状況は大きく変わります。
もしこの段階で、毎年100万円を貯金できているとしたら、
貯金による増加額も100万円、投資による増加額も100万円。
つまり、両者は同じになります。
ここまで来ると、「貯金」と「投資」の重要度は並びます。
そしてこのあたりから、ようやく
・どんな資産配分にするか
・株式と債券の割合をどうするか
・リスクをどう管理するか
といった、投資の中身に時間をかける意味が出てきます。
つまり、資産形成は
人生の前半では貯金の力が強くで、
人生の後半になるほど投資収益の割合が大きくなる形になっています。
これは、誰にでも当てはまる「時間軸」の話です。
もちろん、「投資は早く始めた方がいい」という考え方自体は正しいです。
時間を味方につけることで、複利の効果を最大限に活かせるからです。
ただし、ここで重要なのは自分が使う時間の配分です。
人生の最初の段階で、投資の勉強ばかりをして、相場を毎日チェックし、
利回りを1%でも上げることに必死になる。
こうした行動が、必ずしも合理的とは限りません。
それよりも、
・どうやって収入を上げるか
・どうやって貯金体質を作るか
・どうやってお金が残る家計を作るか
こうした土台づくりに時間を使った方が、結果として将来の資産は大きくなります。
資産形成には、明確な順番があります。
最初は、貯める力を身につける。
次に、収入を伸ばす。
そして、資産が育ってきた段階で投資の中身を磨いていく。
この順番を間違えないことが、長期の資産形成ではとても重要です。
「何割貯金すべきか?」という問いに正解はない
資産形成の話になると、よく聞かれるのが
「貯金は何割くらいするのが正解ですか?」という質問です。
1割貯金、2割貯金、3割貯金。
本やSNS、セミナーなどでも、こうした数字がよく登場します。
しかし、私はこの問いそのものに、少し違和感を持っています。
なぜなら、何割が正解かは、人によってまったく違うからです。
たとえば、年収200万円の人が「5割貯金しましょう」と言われたらどうでしょうか。
年間100万円を貯金する計算になります。
生活費は残りの100万円。
月に換算すると約8万円です。
家賃、食費、光熱費、通信費。
現実的に考えて、かなり厳しい生活になることは容易に想像できます。
一方で、年収600万円の人が年間100万円を貯金する場合。
貯金割合は約17%です。
割合だけを見ると少なく感じるかもしれませんが、
生活の現実としては、こちらの方がはるかに実行しやすい。
同じ100万円でも、人によって難易度はまったく違う。
だからこそ、「何割貯金すべきか?」という問いに、一律の正解はありません。
大切なのは、割合ではなく、
なぜ貯金をするのか、その考え方を理解しているかどうかです。
貯金とは「お金を残せる構造」をつくること
貯金というと、「お金を我慢して貯めること」だと思われがちですが、
本質はそこではありません。
貯金とは、収入よりも少ない支出で生活できる構造をつくることです。
言い換えると、お金が自然に残る家計をつくれるかどうかという話です。
この考え方が身についていないまま投資を始めても、
ほとんどの場合、うまくいきません。
なぜなら、投資でお金が増えても、
それ以上に支出が増えてしまうからです。
だからこそ重要なのが、
先に貯金額を決める
残ったお金で生活する
この順番です。
どんな投資本を読んでも、どんな資産家の話を聞いても、
ほぼ必ず出てくる共通点です。
逆に言えば、この考え方が身についた時点で、
すでに資産形成のスタートラインには立っています。
支出は「すべて削る」のではなく「大きいところから」
支出には、大きく分けて2種類あります。
固定費と変動費です。
固定費とは、
家賃・住宅ローン、通信費、サブスクリプション、自動車ローンなど、
毎月ほぼ確実に発生する支出です。
変動費とは、
食費、交際費、旅行費、娯楽費など、
月によって増減する支出です。
ここでよくある失敗が、
すべてを節約しようとすることです。
食費を極端に削る。
楽しみをすべて我慢する。
いわゆる「爪に火を灯すような生活」になります。
このやり方は、ほぼ確実に長続きしません。
だからこそ、支出を見直すときの基本は、
金額の大きいところからです。
固定費は、一度下げると、その効果が毎月ずっと続きます。
たとえば、家賃を1万円下げられれば、年間12万円。
通信費を見直して月5000円下げられれば、年間6万円。
この積み重ねは、確実に貯金体質をつくっていきます。
節約か、収入アップか。答えは「収入レベル次第」
ここでよく出てくるのが、
「資産を増やすには、節約と収入アップ、どちらが大事なのか?」
という問いです。
これはとても良い質問ですが、答えはひとつではありません。
なぜなら、収入のレベルによって、取るべき戦略が変わるからです。
収入が低い段階では、いくら節約を頑張っても、
貯金できる金額には限界があります。
一方で、収入が高くなればなるほど、
同じ節約でも、貯金できる金額は大きくなります。
具体例を見てみます。
年収300万円で生活費を200万円に抑え、
年間100万円を貯金する。
これはかなり努力が必要です。
一方で、年収1000万円で生活費を400万円に抑え、
年間500万円を貯金する。
こちらは、現実的に可能なケースも多いでしょう。
生活費の金額だけを見ると後者の方が多く使っていますが、
貯金額は5倍です。
ここから分かるのは、
支出を減らすことだけでは、お金持ちにはなれないということです。
節約は大切です。
ただし、それだけでは限界があります。
資産形成の王道は、
収入を増やし、余剰資金を投資に回すことです。
投資初期に最も重要なのは「元本」と「入金力」
投資を始めると、多くの人が「利回り」に意識を向けます。
できるだけ高い利回りで運用したい。
その気持ちは自然なものです。
しかし、投資初期において、
利回りはそれほど大きな意味を持ちません。
たとえば、投資元本が100万円の場合。
年率5%ならリターンは5万円。
年率7%に上げられたとしても、7万円。
差は2万円です。
この2万円のために、
毎日相場をチェックし、銘柄を調べ、
大きなストレスを抱える。
それが本当に合理的かというと、疑問が残ります。
一方で、元本を100万円から200万円に増やせたらどうでしょう。
年率5%のままでも、リターンは10万円になります。
利回りをいじるよりも、元本を増やす方が、はるかに効果が大きい。
これが投資初期の本質です。
そして、その元本を増やす力が、
入金力です。
入金力とは、
毎年どれだけ投資にお金を回せるかという力です。
これは、
収入 − 支出 = 投資に回せるお金
このシンプルな式で決まります。
人生の後半で、資産は一気に伸びる

入金力を高め、投資を続けていくと、
ある時点で大きな転換点が訪れます。
それが、入金額よりも、投資からの収益の方が大きくなる瞬間です。
この段階に入ると、資産形成の主役は、
自分の労働から、お金そのものへと移っていきます。
ここから先は、
「どれだけ増やすか」よりも、
「どう守るか」が重要になります。
分散は十分か。
リスクを取りすぎていないか。
生活を壊すような投資になっていないか。
人生の後半で資産が一気に伸びるのは、
才能があるからではありません。
元本が大きくなり、再投資が回り、時間が味方している。
ただ、それだけです。
まとめ|資産形成は順番と考え方で決まる
貯金を優先すべきか、投資を優先すべきか。
答えは、両方必要だが、順番があるです。
最初は、貯める力をつける。
次に、収入を伸ばし、入金力を高める。
そして、投資で時間を味方につける。
資産形成は、
将来お金の不安を減らし、人生の選択肢を増やすための、長期的な取り組みです。
最初は地味で構いません。
見た目に増えないのが当たり前です。
正しい順番で、正しい場所に時間を使っていれば、
結果は必ず、人生の後半で形になって表れてきます。

会社員として働きながら、長期・分散・低コストを基本としたインデックス投資と安定した家賃収入を生む不動産投資を実践し、金融資産1億円を40代で達成。 培った知識と経験をもとに、”資産形成FP”として活動し、「誰でも経済的自由を目指せる時代」を作ることを目標とします。










